皆さんこんにちは。ひじきでございます(久しぶりに名乗るところから始めてみました)。前回に引き続き、今回も読書会の話です。と言っても、今回は昔馴染みの集まりではなく、“あの読書会”の話でございます。

 先月、「とあるテスト版読書会レポート」という2回にわたる記事をお送りしたことがありました。





 そこで触れていたように、この度、かねてよりお世話になっている「彩ふ読書会」の姉妹コミュニティとして、オンライン読書会を主な活動とする新たな読書会が立ち上がりました。その名を「彩なす家読書会」と言います。そして先日、遂に、第1回の彩なす家オンライン読書会が開催されました。これからその第1回読書会の話をしようと思います。

 読書会は、6月27日(日)の14時から16時まで、Zoomを使って開催されました。この日の読書会は、参加者がそれぞれ本を紹介する“推し本披露会”形式でした。

 参加者は開始時間までに前もって知らされたミーティングルームに入り、そこで読書会の主催者であるのーさんから、読書会の流れや注意事項、さらに本を紹介する時に使う画面共有機能の使い方について説明を受けます。その後はZoomのブレイクアウトルームという機能を使って少人数のグループに分かれ、本の紹介を行います(ここが、読書会のメインの部分になります)。その後の流れを話しておくと、15時半を回ったところで参加者は再び全体のミーティングルームに戻ります。そして、今後の読書会の活動予定を聞いたところで解散になりました。何人かのメンバーはその後もミーティングルームに残って雑談を交わしていました。

 さて、ここからは読書会のメインの部分である小グループでの推し本披露の様子へと話を進めていきたいと思います。この日の読書会には全部で16名の参加者がおり、押し本披露は3つのグループに分かれて行われました。複数のグループにまたがって参加することはできませんので、僕が参加したBグループの話し合いの様子をたっぷりご紹介していきたいと思います。

 グループに分かれた後、まずは参加者同士で自己紹介を行います。名前(読書会の中で使っているニックネーム)と好きな本や作家、最近ハマっていることなどについて簡単に話すものです。オンライン読書会の場合、自己紹介には音声のテストという意味合いもあります。マイクが入らなかったり、声が聞こえ辛かったり、逆に声が大きすぎたりということが起こり得るので、こういう確認も欠かせません。

 自己紹介が終わったら、いよいよ本の紹介に入ります。本の紹介は基本1人1冊ずつで、1周回って時間が余ったら2冊目に入ってもよいということになっています。今回Bグループには僕を含め5人の参加者がおり、本の紹介に充てられる時間が1時間と少しありましたが、これはこの人数で1冊ずつ紹介するのにちょうど良いくらいの時間でした。

 なお、グループの進行は進行役が行います。Bグループの進行はワタクシ・ひじきが担当させていただきました(と言っても、タイムキープをしつつ皆さんに話を振っていくという程度の役目なので、さほど難しいわけではなく、自然体でできました)。

 それでは、どんな本が紹介されたのか、順番に見ていくことにしましょう。


◆1.『暇と退屈の倫理学』

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)
國分 功一郎
太田出版
2015-03-07


 ワタクシ・ひじきの推し本です。1週間前に別の読書会で紹介した本を、彩なす家読書会でも取り上げました。ネタがないのか? 恥ずかしながらそういう側面も若干あるのですが、この本についてはそれ以上に、色んな人に紹介したいという思いや、繰り返し話すことで自分なりに消化していきたいという思いが強かったと自負しています。

 この本は、「人は誰しも退屈する。ではその退屈とどのように向き合っていけばいいのか?」という問いを中心に据えながら、暇と退屈について探究していく哲学書です。どうやったら幸せな、満ち足りた人生を送れるようになるかを説く本は沢山ありますが、反対に暇や退屈について深く考える本というのはあまり見かけません。テーマ設定やタイトルだけでもインパクトのある本ではないかと思います。

 本の内容で印象に残っているものの1つに、〈暇であること〉と〈退屈であること〉とは全く別だというものがあります。

 時間が空いていたからパーティーに参加した。会話やダンスは楽しく、食事や飲み物も素敵だったが、どこか満たされないような気がする……

 これはハイデッガーが挙げた退屈の一例だそうですが、ここでは〈暇ではないけれど退屈である〉という現象が示されています。このように、暇と退屈を分けて考えるだけでも、退屈に幾つかの種類があることが見えてきますし、人によって感じている退屈には違いがあるのかなということも考えられるようになります(ちなみに、僕自身は、暇でありかつ退屈であるという状況に陥りやすい人間らしいということがわかってきました)。

 あと、この本では暇と退屈を論じるに当たって、様々な哲学者の議論が参照されていますが、それらも1つ1つが刺激的で興味深いものでした。一部難解なところもありますが、総じてわかりやすい文章で書かれており、哲学の知識がない人にとっても読み易い本なのではないかと思います。暇・退屈という言葉を聞いてピンと来るものがあるという人には、ぜひ一度手に取ってみていただきたい1冊です。


◆2.『カフェと日本人』

カフェと日本人 (講談社現代新書)
高井 尚之
講談社
2014-10-17


 東京の彩ふ読書会の常連で、この日はメモ係も担当してくださった男性からの推し本です。自己紹介の時、「よく読んでるのは新書やノンフィクションで、豆知識や雑学の本が好きです」という話がありましたが、紹介いただいた本もご多分に漏れずといった感じのものでした。

 この本は、カフェが海外から日本へどういう風に入ってきて、そこから現代にかけてどういう風に展開しているのかを順を追ってまとめた新書です。時代によって変わっていくカフェの姿を追うのも、時代によらず変わらない日本人のカフェとの付き合い方を見るのも面白い1冊のようです。

 時代の変化という点で見ると、昭和のカフェは、情緒的な作りの個人店が多く、店員はこだわりをもったベテランで、ただし食事のメニューはカレーとスパゲッティのようなお決まりのものが多いというイメージなのに対し、平成のカフェはシンプルで機能的な作りのチェーン店が多く、店員も若い人が多いというイメージで、ただ食事のメニューを見るとカフェご飯のようなこだわりが見えてくるというイメージがある、というようなことが書かれているようです。確かに、正反対とは言わないまでも好対照をなしているといった感じがあります。

 一方で、日本人は海外由来のカフェというものを日本独自のものにアレンジしていくのが得意だという話も本の中で出てくるようですが、こちらは時代によらず変わらない日本のカフェの風景なのかなと、僕などは思います。もちろん、かつての名曲喫茶やジャズ喫茶、ノーパン喫茶(カフェというより風俗に近い?)から、猫カフェやメイド喫茶、鉄道喫茶へというように、時代によって登場するものは違います。ですが、カフェに何らかのコンセプトを設けてアレンジしようという動きは時代を超えて共通しているように思えます。話を聞きながらそんなことを考えていました。

 他にも、家カフェの流行や、都道府県ごとのカフェに対する入れ込み具合の違いといったテーマなどが、本の中では取り上げられていると言います。カフェが好きな人、そして雑学が好きな人には堪らない1冊なのだなということが、紹介を聞いているだけでもヒシヒシと伝わってきました。


◆3.『トラックドライバーにも言わせて』

トラックドライバーにも言わせて (新潮新書)
橋本 愛喜(はしもと あいき)
新潮社
2020-03-13


 東京の彩ふ読書会に1年ほど参加していたという女性からの推し本です。これまでテスト版読書会などでご一緒した時には、いわゆる文学作品だったりマンガだったりを紹介されていたのですが、この日の推し本は、物流業界の内情を扱った新書でした。

 著者である橋本愛喜さんは、過去にドライバーとしてトラックを運転した経験もお持ちの方。この本は、そんな橋本さんが業界の関係者に取材を重ねて、トラックドライバーの世間的なイメージを問い直したり、業界の裏側にあるやむを得ない事情を明らかにしたりしていくものです。トラックドライバーというと「態度が悪い」「マナーが悪い」といった印象が付き纏いがちですが、この本を読むと、一部のイメージは事実に反すること(交通規則を遵守しているドライバーの方が圧倒的に多い)、そして一部のマナーの悪さには訳があることがわかると言います。

 話の中で印象的だったのは、路上に駐停車しているトラックが多い理由に関するものでした。トラックドライバーは、荷主(物の運送を依頼するお客さん)のもとに遅れて着くだけでなく、早く着くこともできません。さらに、近所に迷惑をかけまいとする荷主の意向で、その近くにトラックを停めておくこともできません。頼みの綱は大きな駐車場ですが、それらは荷主のもとから遠い郊外区域にあることが多く、おまけに、トラック用の駐車スペースが確保されているわけでもありません。やっとの思いで駐車場に辿り着いても、先に車が停まっていればどうしようもないのです。このように、トラックを停められる場所が限られていることが、結果的に路上に停めることにつながってしまっているのだといいます。つまりそれは、ドライバーのマナーの問題以前に仕組みの問題なのです。——この話1つ取っても「そうだったのか!」という気付きがありました。

 物流問題は近年注目を集めていますし、通販市場の成長を背景に物流業界は存在感を増しています。今だからこそ業界事情を知っておきたいという気持ちになる、推し本紹介でした。


◆4.『トラりんと学ぶ日本の美術』シリーズ(全4冊)



 京都の彩ふ読書会によく参加されていた女性からの推し本です。まち歩きや神社仏閣巡りなどを趣味にされている方ですが、今回ご紹介いただいたのは、京都国立博物館(京博)監修の、美術・工芸作品鑑賞の手引き本でした。

 タイトルに名前が挙がっている「トラりん」は、京博のマスコットキャラクターです。日本画の中から飛び出してきたという、自身が作品のようなキャラクターですが、我々の世界での年齢は1歳にも満たないため、美術や工芸については全くの初心者です。このシリーズは、そんなトラりんが京博の学芸員さんから作品について説明を受けるという設定で書かれています。つまり、初心者向けの解説本ということです。トラりんと学芸員さんの会話調のやり取りが多く、また図像が多くを占めているため、早い人であれば1日1冊のペースで読み進められるといいます。

 紹介してくださった方の一番の推しは、第2巻「神仏への祈り」だそうです(読書会では第1巻「王朝の雅」が画面共有されていましたが、この記事では敢えて第2巻のリンクを貼っています)。表題の通り、神像・仏像に焦点を当てた巻で、神様・仏様の種類やそれぞれの意味・特徴などが解説されています。神社仏閣巡りを趣味にしている紹介者にとっては、それがとにかく有難かったのだといいます。

 また、宗教的な観点・美術的な観点の双方から作品に迫れるのもこの巻の醍醐味のようです。例えば、「山越阿弥陀図」という、山の向こうから阿弥陀様姿を現わしこちらを見るという題材があるのですが、これは仏教的には誤った描写であるものの、そのために絵画表現としては迫力のあるものになっているといいます。正しさと効果、どちらを取るかという問題が、表現の世界に遥か昔からあったことが窺える興味深い話です。

 僕は芸術方面の教養がまるでなく、「己の直感を信じたらそれでええやろ」という不勉強現状肯定論を掲げてここまで来たのですが、こういう話を聞いていると、大まかな内容だけでもいいから知ってみるのも面白いなと思えてきました。


◆5.『国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ』



 京都の彩ふ読書会に参加していた女性からの推し本です。これまでの読書会では、日本・海外の別を問わず文学作品を紹介されていた方ですが、この日は自己紹介の時に「今日はそれとは違うジャンルの本なんです」という話が……まさかの伏線型推し本で、どんな本が来るのだろうと思っていたところへ登場したのは、宇宙の謎を扱った読み物でした。

 著者である本間希樹さんは、ブラックホールの写真を撮る国際プロジェクトの日本チームのリーダーを務めた、天文学とブラックホールのエキスパート。この本は、そのエキスパートが、ブラックホールのこと、そして宇宙のことを、小学生にもわかるように解説したものです。イラストが沢山載っていて親しみやすいので、小さなお子さんのいる方にもおススメできるといいます。

 ブラックホールというと、一度入ったら出ることのできない不気味なものという漠然としたイメージがありましたが、詳しいことはまるで知らなかったので、紹介中の話は新鮮なものばかりでした。

 ブラックホールは穴ではないこと。とにかく重力が凄まじく光すらも吸い込まれてしまうということ。ブラックホールの写真に写るホールの外側の光は、実際にはブラックホールから遠く離れた場所にあって、今まさに吸い込まれようとしているそれであるということ。ブラックホールの中では密度は無限大になり、体積は無限小になるということ。その周囲ではあまりの重力のために、空間も時間も歪んでしまうということ……

 おかしいですね。小学生にもわかるブラックホールの本のはずなのに、話が壮大過ぎてわけがわからなくなってきました。ちゃんと読めばわかるのでしょうか。それとも、わからないけれど不思議で面白いと思う心が大事なのでしょうか。とにかく、日常生活のあれこれなど吹っ飛んでしまいそうな本でした。

 ちなみに、紹介された方がこの本を手に取ったのは、元々天文学に興味があったからとのこと。著者である本間さんを講演会を通じて知ったのが、本を知るきっかけになったと話していました。文学から天文学に至る興味の幅広さに、改めて驚嘆したものでした。

     ◇

 以上、Bグループで紹介された5冊の推し本について書いてきました。皆さんもうお気付きのことと思いますが、今回Bグループでは小説・マンガが1つも出てきませんでした。読書会というものに顔を出すようになって数年が経ちますが、こんなことは記憶する限り一度もなく、面白いことが起こったなあと思いました。Bグループの他の参加者も同じように感じていたらしく、全体のミーティングルームに戻るまでの短い時間には、「こんな日もあるんですねえ」という会話が交わされたものでした。

 言うまでもないことですが、彩なす家読書会の推し本披露会には、紹介する本についてジャンルの縛りはありません(……ってことでいいですよね、のーさん?)。彩なす家の姉貴分に当たる彩ふ読書会では、小説・新書・エッセイ・評論・マンガのほかに、児童書・絵本・詩集・画集・月刊誌・同人誌など、様々な本が推し本として紹介されていました。お気に入りの短編のコピーを持ってきたという猛者も2、3人いたと記憶しています。「可能性は無限大」いつだったか読書会の中でそんな言葉を聞いた覚えがありますが、推し本披露会1つ取ってもその言葉に偽りはないと感じます。

 次回はどんな本が紹介されるのでしょうか……と心が躍っているうちに、第1回・彩なす家オンライン読書会のレポートは終わりにしたいと思います。今後の予定については、彩なす家読書会のホームページに載っていますので、ぜひこちらをご覧ください(リンク先の中に「開催予定」の項目があります)。



 それでは!

(6月29日)